ざっくりあらすじ
普段博多に住んでいる奈美や知香、そしてその母親たち。ルーツを島に持つ彼女らですが、ある連休「吉川の家の納屋」の草を刈りに行くことに。
せっかくの連休が使ってもいない納屋の草刈りで潰れてしまうことに最初はぶーたれている奈美ですが、島に行けば島在住の敬子婆の家で、わいわいと親族ですごします。
そこにところどころ挟まれる、島に関する物語たち。たとえば、放置してあるカヌーから、かつてその持ち主だった少年のエピソードが語られたりとか。
そのように、島に関するエピソードと奈美たちの一日が交互に展開していき、島から帰った奈美は、母に納屋に生えていた雑草の名前を訊きます。「背高泡立草」はその中のひとつなのでした。
感想
芥川賞芥川賞している文体だなと感じた。昔風の純文。
一行一行が短い文体を好むので、この作品の文体は一行が非常に長く最初は難儀した。
あと、登場人物がたくさん出てきますが、誰に肩入れする、というのか、誰をメインとして読んでいけばいいのかわからず困惑。たぶん奈美なんだろうけど。
この作家さんの作品は、デビュー作の『縫わんばならん』を読んでいる。これも島の話なのだけど、「そうたい、そうたい」というセリフが、なんとなくだけど明確に思い出せる。
「こんなにもたくさんの登場人物を書き分けて、老人の心身の描写が見事」とあのときすごく感動した。今作もそうである。
しかし、ハッとさせられるのは『縫わんばならん』の方で、今作よりそちらの方が好きだった。
この作家さんは、デビュー作から一貫して島の話を書いているそう。
芥川賞の選考委員に「島を出るパスポートを手にした」と言われたそうなので、今後のこの作家さんがどんなものを書くのか楽しみにしている。