ざっくりあらすじ(表題作)
小学生の頃やっていた魔法少女ごっこを36歳になってもひそかに続けているリナ。
昔の魔法少女仲間のレイコとは、今でも仲がよく、レイコはリナが魔法少女を続けていることを知っています。
レイコが同棲している彼氏はDVで最悪なやつ。リナはレイコを家に匿いますが、彼氏にバレてしまいます。
レイコを返してもらうためにはなんでもするという彼氏に、リナは「引退したレイコの跡をついで魔法少女を自分と一緒にやること」を提案というか無茶振りします。
しかし、彼氏はそれにのってしまいます。
二人の魔法少女(36歳女と男)は東京駅で魔法少女としてパトロールなどをしていくが、それが思いもよらぬ展開に……。
感想
私は村田沙耶香さんの作品が大好きなんですけど、なかなかエグいので、人にはあまり勧めていません。
コンビニ人間は貸しますが、それ以外は抵抗があります。
しかし、この本は、誰にでも勧められる。
いや、表題作以外はなかなかエグいんですけど、なんだろう、表紙が可愛いからか爽やかさを感じる。むしろ、程よいエグさだからこそ、ああこういう作家さんなのね。と引かれない程度にわかってもらえそう。
話を表題作に戻しますが、村田沙耶香作品で声出して笑ったのは初めてです。
たしかにDV彼氏はイライラするんだけど、のちにスカッとする展開があり、読後感はとてもいい。
まあ、読みようによってはこれも狂気に満ちた話ではあるんですが、暖かく見守ることのできる狂気というか。
魔法少女になる妄想ってかなりの女性が小さいときすると思うんですが、それを持ち続けてもいいし、そのおかげで訪れる色々な幸せを大事にしてもいい。優しい話です。
なので、毎日ストレスフルに過ごす人にこそ、この本はおすすめしたいです。
収録作品『無性教室』も、ジェンダーの問題が村田沙耶香流にアレンジされていて、ずっと心に残っていく感じがする。
他二編も素敵な狂気の話で、村田ワールドに浸れます。村田沙耶香どこから入ろうという方は、ぜひこの本からどうぞ。